ペルチェモジュールの 最大温度差・最大吸収熱 |
ペルチェモジュールの最大温度差は実際に期待できる温度差というよりもそのモジ ュールの性能を示すパラメータと考えるべきです。最大温度差を理解するために以下 にその計算式を導き出します。 電流を増していくと電子によって運ばれる熱量も増えるのですがジュール熱も増えます。つまりペルチェモジュールの両サイドの温度差が電流の関数になっているわけです。ですから最大温度差になる電流値が存在するわけです。その計算方法を以下に示します。 ペルチェモジュールの低温面と高温面の熱バランスを考えて見ますと次のようになります。 まずコールドサイドでは、 S・I・Tc − K・(Th − Tc) − 1/2・I2R = Qc ・・・(1) ホットサイドでは、 S・I・Th − K・(Th − Tc) + 1/2・I2R= Qh ・・・・(2) となります。 またQcとQhの関係は Qc = Qh − I2R − S・I・(Th - Tc) ・・・(3) となります。 I: 電流 Tc: コールドサイドの温度 Th: ホットサイドの温度 R: 抵抗 K: サーマルコンダクタンス S: ゼーベック係数 Qc: コールドサイド吸熱流 Qh: ホットサイドからの放熱流 ΔT: Th − Tc 最大温度差ですが(1) + (2)を行うと、 S・I・(Th + Tc)− 2・K・(Th − Tc) = Qc + Qh Th + Tc = 2・Tc + ΔT であるから S・I・(2・Tc + ΔT) − 2・K・ΔT = Qc + Qh ・・・・(5) となります。 ペルチェモジュール内の熱量が一定で、Qc = 0 であるから、(3)式を変形して (5)式に代入すると S・I・(2・Tc + ΔT) − 2・K・ΔT = I2R + S・I・ΔT さらに変形して ΔT = S・I・Tc/K − I2・R/(2・K) = −R/(2・K)・(I − S・Tc/R)2 + S2・Tc2/(2・K・R) = −R/(2・K)・(I − S・Tc/R)2 + (1/2)・Z・Tc2 ・・・・・(5) ∵ K・R = λ・ρ、 Z = S2/λ・ρ λ: 熱伝導率 ρ: 抵抗率 となります。 (5)式から I = S・Tc/R の時、ΔTは最大になり、 最大温度差 ΔTmax = (1/2)・Z・Tc2 ・・・・・(6) となります。 このように最大温度差はZと温度によって決まり、ペルチェの性能を表すパラメータになります。しかし、温度の影響が大きすぎるため、性能を比較するのであれば性能指数の方が良いと思います。 次に最大吸収熱を計算します。 (3)式に(2)式を代入すると Qc = S・I・Th - k(Th-Tc) + 1/2・I2・R - I2・R - S・I・(Th-Tc) = S・I・(Tc+ΔT) - k・ΔT - 1/2・I2・R - S・I・ΔT = S・I・Tc - k・ΔT - 1/2・I2・R = -R/2・(I2 - 2・S・I・Tc/R) - k・ΔT = -R/2・(I - S・Tc/R)2 + 1/2・S2・Tc2/R - kΔT (7) 理想的な放熱器をつけた場合の最大吸収熱 Qcmax はΔT = 0 時であるから I = S・Tc/R で Qcmax = 1/2・S2・Tc2/R となります。 計算例 256エリメント、 AC抵抗 1Ω、ゼーベック係数 200μV/K、Tc=230 Kの場合 Qcmax = 1/2.・0.00022・230・230/(1/256)・256 = 69 W |